浜松市中央区の内科・循環器科 本康医院

本康医院
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ミニ話題

 

心臓の音

検診や通常の診療の際、心音に異常があるといわれた方は少なくないと思います。心音は、字のごとく心臓の音“ドキドキ”する音です。聴診器では、心臓の音が増幅して聞こえます。調律、過剰音の有無、心拍数などから心臓の調子を推測します。心雑音というのは、ドキドキとする心音の間に、余計な雑音が聞こえることをいいます。軽度の心雑音は、正常者でも聞こえることがありますが、大きな音や急に聞こえるようになった雑音は、病的なものが多く注意が必要です。

心雑音は、心臓の4つある部屋の間にあるとびら(“弁”といいます)に異常により生じることが多く、大きく以下の種類があります。

1)狭窄音:弁が硬化により動きの制限がおこり、乱流をおこす。血流が少なくなるので心不全をおこすことがあります。
2)逆流音:弁の締まりがわるくなり、通常の血流と反対向きの逆流がおこることにより聞こえます。逆流量が多いと心臓に負担がかかってきます。
3)シャント音:心臓には血圧の異なる部屋があり、その部屋の境に生まれつき穴が開いていたり、通常とはちがう路があったりすると聞こえます。小児で多くみられますが、成人になってはじめて見つかる場合もあります。

心雑音があるからすべてが心臓病というわけではありません。私たちは、患者さまの症状や他の検査から、心臓病であるかを判断します。ただ、下記の場合には、受診、精密検査を受けたほうが良いと思います。

◇小児
1)はじめて心音異常、心雑音といわれたとき
2)以前より雑音が大きくなってきたとき
3)心拡大や心電図異常もいわれているとき
4)運動すると息切れがしたり、足がむくんでいるとき

こういうときは、心電図、胸部X線、心エコー図などで、心臓の形態、機能をみておいたほうがよいでしょう。とくに小児や運動量の多いお仕事の方は今後の生活様式を左右する可能性もありますから精密検査をしておいたほうが良いと思います。
心雑音は、聞く先生によりあったりなかったりすることもあります。状況により音の大きさが変わることがあるからです。いつ聴診されても大きい心雑音がするのは、異常といえるでしょう。

エコノミークラス症候群って何?

新潟中越地域でおきた大地震避難をしている方の中に“エコノミークラス症候群”がみられたと報道されました。今までの大地震の際にも報道され、お聞きになったことがあるかもしれません。正しくは下肢深部静脈血栓症といい、飛行機のエコノミークラスに乗っていた方の中で下肢を長時間動かさなかったときに認められた下肢の静脈血栓症からこんな名前がついています。しかし、飛行機に乗らなくても起こることが下記のように多々あります。

  • 車に乗って移動しているとき渋滞にはまってしまい長時間足を動かさなかった。
  • 1日中、椅子に座っていた(車椅子を含む)。
  • 足を怪我して、ほとんど動かさなかった。
  • 手術中~手術後の安静。

下肢に血栓ができると、足がはれてきます。足の深部静脈は心臓、肺の血管までつながっているため血栓が急にはがれて肺の血管を閉塞してしまうことがあり、胸痛、呼吸困難、動悸をおこし、血中の酸素が低くなるため、場合によっては突然心臓が止まってしまうことがあります。これが、この病気の怖いところです(肺塞栓症)。

下肢に血栓があるかどうかを診るには、エコーを使います。血栓がある場合には、それを溶かしたり、肺までとばさないように予防する道具を使用したりする場合があります。入院している場合には、ストッキングや足のポンプなどの予防策をとっていることが多くなっています。ご家庭でできることとしては足首を上下させたり、回したりしていただくとふくらはぎの筋肉がポンプの役割をするので血栓ができにくくなります。

また、足の表面に拡張した血管がみられることがあります。これは静脈瘤といって比較的浅いところにある血管の病気で、エコノミークラス症候群の原因にはなりにくいといわれています。

このようにエコノミークラス症候群は、大地震のような特殊な状況のみに起こることのみではありません。ご心配なことがあれば、ご相談ください。当院でも、下肢静脈血栓症のスクリーニングをさせていただきます。

歩くと足が痛いのだけれど歩きすぎ?

最近、健康増進のため、ウォーキングを始めたという方もみえるとおもいます。
足にあった靴をはき、無理のないペースではじめたのですが、いつも200mくらいのところで足が疲れて一服しなければならなくなる。運動不足かと思って、しばらく続けてみたが、変わらない。

こんな症状をお持ちの方は、閉塞性動脈硬化症という疾患の可能性があります。堅苦しい名前がついていますが、足の血管の動脈硬化による血流不足による病気です。

心臓から足先まで動脈という血管があり、血液が流れています。動脈硬化により血管の中が狭くなり、足先に行く血液が不足がちになります。そうすると、歩いたときには、十分な血液が足りないので、足の筋肉が悲鳴を上げてきます。これが病気の正体です。

動脈硬化の程度により、症状の度合いが違います。ひどくなると、足の先に壊死を起こしてくることがあります。
診断は、上肢の血圧と下肢の血圧を測定することによってつきますが、程度をみるためにCTやMRAまた血管造影をすることがあります。

治療として、狭窄の程度と部位によって、薬物療法(血管を広げる、血液をサラサラにする)、血管を拡張する手術(風船で広げる、ステントという金属の網で広げる)、バイパス手術(狭窄の前後をつなぐ)をすることがあります。
この疾患は喫煙をされる方や糖尿病、高血圧をお持ちの方に生じやすい病気です。また、この病気の半数に、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)が合併するといわれています。あわせて、精査が必要です。

いびきがうるさい

いびきがうるさいとご家族から言われたことがある方は結構多いかもしれません。いびき自体は男性の20%、女性の10%程度にみられます。同室者の眠りを妨げない程度、また規則的な呼吸であれば心配ありません。いびきをかいた後、いったん静かになってまた大きくなったという不規則ないびきにお気づきの方もあると思います。実はこの間には呼吸が止まっていることも多いのです。こうした無呼吸の時間が長かったり、回数が多くなったりすると翌日の生活に影響を及ぼします。少し前に新幹線の駅を止まれなかった運転士の方がいましたので病気の名前をお聞きになった方もあるかもしれません。夜間の無呼吸は日中の集中力の低下、また突然の眠けをきたすことが知られています。無呼吸や低呼吸によっておこる病気が睡眠時無呼吸症候群といわれているものです。

原因としては、首周りの形態異常があげられます。寝たときにのど、口、舌のまわりの筋肉や組織の緊張がゆるみ、息の通り道を塞ぐことによっておこります。肥満の方、扁桃の大きい方、顎の小さい方などに起こりやすいといわれています。

日常生活の中でどのくらい眠けがあるかを以下のような状況での眠けの頻度にて決めます。
座って読書をしているとき、テレビを見ているとき、会議や映画館で座っているとき、車の助手席にいるとき、午後横になっているとき、座って話をしているとき、昼食後座っているとき、運転中少し停車しているとき、こうした状況でいつも眠くなるという方は注意が必要です。

睡眠時無呼吸の方は高血圧を起こしやすく、冠動脈疾患、糖尿病、脳卒中にもなりやすい可能性があります。また集中力低下や日中の過眠など自分自身の症状だけでなく交通事故や労働災害につながる危険性があります。いびき、睡眠中の無呼吸、昼間の眠気の強い方は、まず簡易検査を受けることをご提案します。検査方法は、手首に記録装置をつけ、指先で酸素濃度、鼻の下に細い管をあてて息の強さをはかるものです。一晩、機械をつけてお休みいただき、翌日その結果を解析し、一晩にどのくらい呼吸が浅くなったか、止まったか、酸素濃度が低くなったかを調べます。その結果で睡眠時無呼吸症候群の診断がつきます。

睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、減量、アルコール、睡眠薬の禁止など生活習慣の改善とともに、治療として持続的気道陽圧法(CPAP)を用いることがあります。これは睡眠時に、マスクを使って持続的に空気を送り、気道がふさがらないようにする方法です。機械を自宅に設置し、夜間のみ使用することで日中の症状を緩和し、保険適用が認められています。

当院では、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を行い、治療の適応となる方には専門施設と連携して治療をご提案します。寝ている間のことは自分ではわかりませんので、ご家族から無呼吸を指摘されたり、やけに昼間の眠気が強いなと感じたりするようであれば一度ご相談ください。

今まで経験したことのない・・・

今まで経験したことのない・・・に続く言葉は、“痛み”が多いと思います。普段健康な方にとっては、どんな症状も“今まで経験したことのない”ということになるでしょうが、このことばは、緊急性をもつ疾患に多くあてはまります。

§頭痛・・・よく知られており、緊急性を要するのは、くも膜下出血です。今まで経験したことのないのに加えて、頭をバットで殴られたような感じ(もっとも、今までバットで殴られたことのある方もあまりいないと思いますが)といわれます。多くは、突然発症し、血圧が上昇します。高血圧のない方にも起こることはあります。こういった症状があったら、安静にして、救急車でしかるべき病院へ行く必要があります。いったん痛みのあった後、治まってしまうこともありますが、放置してはいけません。

§胸痛・・・急性心筋梗塞の可能性があります。特に20分以上続き、冷や汗が出たような場合は、早目の受診が必要です。また、普段から足がむくんでいる、また足がご不自由であまり動かさない方に、突然痛みが起こった場合、肺塞栓といった病気の可能性もあります。前者は、冠動脈という心臓の周りの血管がつまったことによる、後者は足の静脈にできた血栓が肺動脈につまることによって起こります。
背中に痛みが走った場合、大動脈解離という病気の可能性があります。文字通り、血管の壁が裂けることによって痛みが出ます。高血圧の方に多い病気です。

§腹痛・・・胃潰瘍、胆石症などお腹には痛みを起こす病気が多くあります。痛みも激しいのは尿路結石です。一般には、背中~横腹に激しい痛みを生じ、吐いたり、尿が赤くなったりします。似た症状で腹部大動脈瘤という病気があります。お腹の真ん中くらいをとおる血管が瘤のようになり、破裂しかかると激しい痛みを伴います。お尻が痛いといわれる方もみえます。

§神経痛・・・最初から神経痛とわかればいいのですが、なかなかそうもいきません。ピリピリとした、走るような痛みが特徴です。後頭部や肋間におこる神経痛は、間欠的に波のようにおこってきます。痛みの部位に、皮疹がないか見てください。帯状疱疹(ヘルペス)の前兆であることがあります。

実は、今まで経験したことのない痛みというのは、救急処置を要することが多く、救急車で病院に行くことが多いわけです。がまんしたり、放置したりというのは、得策ではありません。ご自分の症状の感じ方を信じて、対処しましょう。

ばい菌を調べて、抗菌剤を使用しましょう

抗生物質(抗菌剤)をください。
発熱でお見えになった方から、こう伺うことがあります。発熱をきたす病気がすべて感染症とは限りません。のどの痛み、鼻汁、咳があれば、かぜの可能性が高く、かぜは、ほとんどウイルスが原因ですので、抗菌剤をのまなくてもよくなります。どんな場合に、抗菌剤を使わなければいけないのでしょうか。それは、抗菌剤が必要なばい菌に感染していると分かった時です。例を挙げてみましょう。
数日前から、排尿時に痛みがあり、残尿感がある。
この症状からは、膀胱炎の可能性があります。膀胱炎は、細菌感染のことがほとんどです。どんな細菌か目星をつけて治療をしなければいけません。当院では、グラム染色という方法で、細菌の見当をつけ、培養検査で菌名と感受性(効くかどうかの判定)を調べています。感受性をある程度まとめておけば、その細菌に効く抗菌剤が推定できます。細菌の種類にかかわらず、なんでもやっつけてしまう薬は、体の中で人間と仲良く暮らしている細菌もやっつけてしまうことがあります。また広い範囲の細菌をやっつける薬ばかり使っていると、徐々に耐性も生じてくる可能性があり、いいことばかりではありません。当院では、できる限り病気を起こしている細菌を調べ、その細菌によく効いて、ほかに悪さをしない抗菌薬の選択を心がけています。尿、喀痰、膿などは、検体がとりやすく、時間も長くなく結果も出やすいので、できるだけ採っていただくよう、ご協力をお願いしています。

膀胱炎の診断です。尿をグラム染色しました。

赤色の細長い細菌が、培養にて大腸菌と判明し、ST合剤で治療しました。

感染している細菌の目安を付けることで、適した抗菌剤を使用することができます。抗菌剤は、使用量、期間を守らないと効果の判定が難しくなります。しっかり服用した後、再来していただき、効果があったかどうか、どんな細菌だったか説明を致します。そんな面倒なことをしなくても、強い薬をくれればいいと思われる方もいらっしゃるとは思いますが、抗菌剤の適正使用は、先日の伊勢志摩サミットでも議題になった、大事な問題です。できるだけのご協力をお願いします。